整形外科

 高齢化が進む大牟田および周辺の地域において、変形性関節症、脊椎症、骨粗鬆症、骨折などの整形外科関連疾患でお困りの患者様の数は増加する傾向にあり、当院でも外来、入院患者数での整形外科の占める割合は大きなものがあります。少しでも皆様のお役に立てます様、努力してまいります。
 現在、日本リハビリテーション医学会臨床認定医でもある整形外科上田部長のもと、リハビリテーション分野での充実を図っており、手術・外傷後や脳卒中などの疾患の早期リハを可能とし、患者様の早期社会復帰を実現しております。
 脊椎外科や股関節等の手術の中でも高度な技術を要する場合は、関連医局の佐賀大学医学部整形外科と連係しており、各分野の専門医師を招いての手術もしております。また、当院の最新の手術室の中でも、人工関節等に対応したクリーンルーム室は九州地区では類を見ない広さ(50㎡)を有しており、細菌感染を防ぎ、安全な手術を可能としております。
 当院では関節リウマチの診療にも力を入れております。リウマチへの治療は今までそしてこれからの十年間で急速な進歩をとげようとしています。治らなかった病気から治せる病気へ変わろうとしており、最新の治療に精通した専門医にかかる事が重要になって来ています。当院では日本リウマチ学会専門医(多数の臨床経験を有し、学会の試験に合格して取得)で、さらに日本リウマチ財団登録医でもある整形外科上田部長が主にリウマチ患者様の診療にあたっています。
 関節リウマチへの新しい治療法である「抗TNFα抗体療法」(レミケード点滴)、「TNFレセプター製剤療法」(エンブレル皮下注)等も当院では開始しております。さらにはアクテムラ点滴もしています。
また、検査部門も充実しており、MRI,helical-scanCT、シンチグラフィー、超音波検査、骨塩定量等が揃い、殆どの検査診断が院内で可能です。

整形外科スケジュール

整形外科の治療方針

はじめに

当院整形外科の治療の目標は、疾患により損なわれた機能の改善を通じ、患者様のADL,QOLの向上を図ることです。後遺障害を残さない、あるいは最小に留める努力が必要です。目標の達成のため、evidenceに基づいた最善の治療を選択出来るよう、様々な情報の収集に心掛けて下さい。整形外科医同士、カンファレンスでの検討を経て実践して下さい。日本整形外科学会等の各種学会のガイドラインや、成績判定基準は出来るだけ採用してください。最小侵襲手術にも留意し、患者様の肉体、経済・社会、精神的負担の軽減を図ってください。また当院でのクリニカルパスに従い、治療を進めてください。リハビリテーション(病棟看護リハ含め)の充実を図っていますので、リハ指示やリハカンファ、回診、リハ担当への直接連絡等を通じ意思の疎通、目標設定、問題点の検討を進めて下さい。

治療方針

項目治療方針
外傷に対する
基本的事項
RICE(安静、冷却、圧迫、高挙)など、基本的治療の原則を守って下さい。腓骨等の神経麻痺、コンパートメント症候群、脂肪塞栓症候群、深部静脈血栓症、肺塞栓症の防止に心掛けて下さい。動かせる関節の自動運動訓練の奨励を全例に、血栓防止弾力包帯、A-Vインパルス(フットポンプ)も必要に応じ使用してください。
高齢者の大腿骨頚部骨折 全身合併症の発生、悪化を未然に防ぐ為、また早期に歩行訓練を可能とし、受傷前の状態に復帰してもらう為にも、全身状態を早期にチェックし、出来るだけ早い手術(入院当日~7日以内)を、通常の場合は腰椎麻酔下に予定してください。入院後手術までは、腓骨神経麻痺発生に注意しながら、たたんだ布団等にて下肢を挙上しスピードトラック牽引3kgを施行して下さい。
外側骨折に対する
手術
安定型;Compression Hip Screw法(通常の場合は3穴のplateで)を第一選択に。  固定性に不安がある場合は上方にCannulated Cancelous Screw 1本追加可能。 不安定型;大転子下方に骨折が及びCHSの固定性が不良となりそうな場合は転子部用の髄内定を選択。つば付CHS法も症例に応じて検討。
内側骨折に対する
手術
Garden分類stage1,2;原則として2穴のCHS+CCSにて骨接合を。場合によってはCCS×3本やHanson pinも考慮。将来、大腿骨頭壊死を起こす可能性が多少(約10~20%)はある事を本人・家族に説明し、希望によっては人工骨頭置換手術も選択可能。 Garden分類stage3,4;大腿骨。
大腿骨・脛骨骨折に
対する手術
骨幹部骨折では可能な場合は髄内釘を選択。骨端部まで骨折が及んでいる場合は骨端プレート等を考慮。大腿骨顆上部骨折には逆行性髄内定を第一選択に。手術までは徒手整復、ギプスシーネ固定、下肢挙上、牽引を組み合わせて施行。鋼線直達牽引を行う場合は、手術部にかからない様工夫を。
開放骨折 初期治療は受傷後6時間以内のdebridementと徹底した洗浄(通常3000ml以上)、整復、固定(ギプス、牽引、創外固定)を基本とする。創傷部位や創部の細菌検査、感受性検査を提出して、抗菌薬選択の基準にして下さい。汚染の強い場合は破傷風に対する予防治療も併用。グラム陽性球菌に対し十分な抗菌力を有する抗生剤点滴を開始して下さい。熱型、赤沈値、CRPを参考にし、全身の炎症反応が軽減傾向にあることを確認後、骨接合手術を計画して下さい。
橈骨遠位端骨折 安定型の場合は、完全な徒手整復の後、ギプスシーネ固定を。出来れば前腕の回内、回外を防ぐ為、肘まで固定を。
不安定型や骨粗鬆が強く、保存的には短縮変形を来しそうな場合は創外固定の併用、橈骨遠位端plateでの骨接合手術を考慮する。
胸・腰椎圧迫骨折 痛みの強い場合や、自宅では安静・臥床が出来ない場合は入院を。可能ならMRI検査にて新鮮骨折部位の特定を。椎体後壁に損傷があったり脊髄・馬尾に圧迫のある場合は慎重に加療をすすめる。骨折部位をカバー出来る範囲の軟性(場合によっては硬性)コルセットを採型・作成、装着を。その後、痛み無い範囲でベッドのギャッジアップ、座位、起立、歩行など安静度の拡大を徐々に進めていく。痛みがあり安静にしている間もベッド上で下肢筋力強化訓練に努める。当初は2週間に1回、骨折部位のX線検査を(2方向と側面のみの1方向を交互に)。
骨粗鬆症 4~6ヶ月に一度、骨塩定量検査を。  ボナロンまたはベネット(胃腸症状で使用出来ない場合はオステン、グラケー等もあり)、Vitamin D、エルシトニン20S 1~2週に一回筋注を組み合わせて加療を。中等度以上の症例には3種類とも処方を。食事摂取内容、運動、日光浴等の指導も行う。
腰椎椎間板ヘルニア 痛み、しびれ、体動困難、SLRテスト強陽性な症例は入院の上、安静臥床、持続骨盤牽引、腰椎軟性コルセット装着、その他各種保存的治療を集中的に2~3週間継続する。症状強い時は仙骨孔硬膜外ブロック、持続硬膜外ブロック、神経根ブロックも考慮する。8割以上の症例は保存的治療にて改善します。それでも軽快しない時は観血的治療(部分椎弓切除、ヘルニア摘出術)を考慮。  筋力低下、膀胱直腸障害が認められる場合は早く手術を予定。
腰部脊柱管狭窄症 先ずは外来通院にての内服、静注、各種理学療法等の保存療法を開始して下さい。手術適応とするのは保存的治療にても症状改善せず、間欠性跛行が100m以下であったり、悪化して来ている症例。膀胱直腸障害や神経根、馬尾圧迫による下肢筋力低下が明らかなものも対象となる。
頚椎椎間板ヘルニア
頚椎症性神経根症
痛み、しびれ、頚椎運動困難、SpurlingやJackson test強陽性な症例は入院の上、グリソン持続牽引、ポリネック固定、その他各種保存的治療を集中的に2~3週間継続する。腰と同様に8割以上症例は保存的治療にて改善します。それでも軽快しない時は観血的治療(頚椎前方固定手術)を考慮。  筋力低下、脊髄圧迫障害が認められる場合は早く手術を予定。
頚椎症性脊髄症
(頚椎後縦靭帯骨化症含む)
手指の巧緻運動障害、下肢の痙性歩行が明らかな症例は頚椎椎弓形成手術の適応とする。単なる四肢のシビレのみでは保存的治療にて経過を観察する。  腰椎、頚椎手術後は原則として2日目から起立歩行が許可されます。希望があれば術後2週間での退院も可能です。
化膿性膝関節炎 関節穿刺にて関節液排出、関節液の細菌検査(感受性含む)、結晶検査、一般検査、場合によっては清潔下に洗浄、抗生剤注入、ギプスシーネ固定、グラム陽性球菌に有効な抗生剤の点滴を開始する。偽痛風や痛風の場合はNSAIDの数日間の投与で症状軽減しやすい。関節鏡視下に滑膜切除、持続洗浄チューブ挿入(2本)、以降、4~2litterの生食水にて洗浄、brushingを行う。場合によっては抗生剤の混注も施行する。細菌検査は陽性に出にくいことも多く、複数回提出する。症状軽快すれば関節の拘縮を防ぐ為、早期にリハビリ、CPM訓練開始する。
変形性膝関節症 まずは外来にて大体四頭筋訓練、体重調整、生活様式等の指導、サポーターや足底板等の装具療法、2Fリハ室での低周波、温熱、レーザー等の物理療法、内服・外用剤処方、関節内ヒアルロン酸製剤注射(数回はsteroidでも可)等の保存療法を試みる。  保存療法にて軽快せず、歩行時疼痛があり、ADLに困難を生じる場合は、年齢やX線上の変化も考慮し観血的治療を検討する。
人工膝・股関節置換手術 関節の破壊が進行した、歩行時の疼痛が強い症例を対象とする。原則として年齢は55歳以上とする。禁忌は各人工関節の挙げているものである。可能な場合はcement lessを優先して使用する。手術に備え、適応に沿いエスポー使用下に自己血貯血を400ml×2回施行する(外来または入院で)。
関節リウマチ ヨーロッパ、アメリカ、日本のリウマチ学会が推奨している新たな治療方針を採用している。関節リウマチに対して有効であるとのevidenceのはっきりしているMTX;メトレート(間質性肺炎、顆粒球減少、肝・腎機能障害等の合併症に注意しながら、週に3c.から開始、症状に応じ8c.まで増量)を中心として、当初はモーバー3T./日、リメタゾン2週に1回静注、ファルネゾンゲル外用等を組み合わせる。症状改善しない時はアザルフィジン、ブレディニン等への追加や変更を考慮する。2~3ヶ月に1回、採血・尿険を行い、活動性・副作用の把握に努める。重症例には免疫療法の生物学的製剤併用を考慮する。前述の各種生物学的製剤治療も積極的にすすめる。
痛風:高尿酸血症 発作の当初はNSAID内服・坐薬、ダーゼン、ウラリット、外用剤、安静・挙上で。  急性期の症状が治まれば、尿中尿酸、クレアチニン測定し高尿酸血症のタイプ分けを行い、適応となる尿酸コントロール薬剤を開始する。腎障害がある場合は尿酸合成阻害薬を選択する。食生活、お酒、運動の指導も行う。
弾発指
狭窄性腱鞘炎
弾発、痛みのひどいものは局麻下に腱鞘切開手術を考慮。痛みが軽いものは外用、リハ、腱鞘内steroid+局麻剤注入で経過観察も可能。
喫煙されている患者様へ
骨折 喫煙は骨癒合をつかさどる細胞に対し抑制的に働くことが各種実験にて証明されています。また統計学的にも喫煙者の骨癒合不良例が多いことがわかっています。欧米の一流の外傷センター病院では喫煙者の骨折治療を断っているところも出ています。当院で治療を受けられている骨折の患者様は、良好な、早期の治癒を望まれる場合は、是非禁煙をお勧めします。
椎間板ヘルニア、
神経痛等
椎間板ヘルニアでの神経圧迫部位では炎症が起こっており、喫煙はその治癒を困難にすることが明らかになっています。また、喫煙は末梢の血流障害を悪化させます。血流障害を伴う神経の圧迫からの痛みは、喫煙により症状の悪化を来しやすくなっています。症状の改善には禁煙が必要です。
全身麻酔 喫煙は慢性の気管支炎を引き起こしています。全身麻酔では気管内にチューブが挿入され、刺激や麻酔薬剤にて痰が出やすくなり、気管が攣縮しやすくなります。喫煙をしている状態では、全身麻酔による肺合併症が発生・悪化しやすく、麻酔を拒否される事があります。全身麻酔を受けられる予定の患者様は即刻、喫煙を中止して下さい。また、手術前にトリフローによる呼吸訓練が必要です。
病気を治していく上で、患者様ご自身にも大きな役割と責任があります。

スタッフのご紹介

常勤医師

医師名

古畑友基

Tomoki Kobatake

(整形外科部長)

専門分野 整形外科
所属学会
認定医
専門医
日本整形外科学会(専門医)
日本人工関節学会
日本肩関節学会
西日本整形・災害外科学会
日本スポーツ協会公認スポーツドクター
医師名

上田淳

Jun Ueda

(リハビリテーション科部長)

専門分野 リウマチ・関節外科、骨折・外傷外科、
脊椎外科、手の外科
所属学会
認定医
専門医
整形外科関連学会多数
日本整形外科学会(専門医・リウマチ医)
日本リウマチ学会(専門医)
日本リハビリテーション医学会(認定臨床医)
医師名

竹下修平

Syuhei Takeshita

専門分野 膝関節、スポーツ整形
所属学会
認定医
専門医
日本整形外科学会(専門医)
日本人工関節学会
西日本整形災害外科学会
日本スポーツ協会公認スポーツドクター

非常勤医師

医師名

野崎修

Osamu Nozaki

専門分野 外傷一般
所属学会
認定医
専門医
日本整形外科学会(専門医)
医師名

松尾大地

Daichi Matsuo

専門分野 整形外科
所属学会
認定医
専門医
日本整形外科学会
医師名

前田和政

Kazumasa Maeda

専門分野 整形外科
所属学会
認定医
専門医
日本整形外科学会
医師名

石井英樹

Hideki Ishii

専門分野 整形外科
所属学会
認定医
専門医
日本整形外科学会

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